新潟・ハルビン市民友好の会30周年式典における王華総領事のスピーチ
「三十年の日中関係の変遷と市民交流の展望」
2011/10/17

 尊敬する篠田昭市長様、

 尊敬する和泉劭平会長様、

 尊敬する阿波村稔センター長様、

 ご在席の皆様:

 おはようございます。

 本日、「新潟・ハルビン市民友好の会30周年式典」にお招きいただきまして、厚く御礼を申し上げます。中国と新潟の友好のシンボルとしてよく知られている「天寿園」で、これまで中国と新潟の友好事業を大変熱心に支えてこられた各界の皆様と一堂に会し、中日両国および新潟市・ハルビン市の友好交流史を振り返るとともに、この民間友好事業の未来について話し会う機会を得たことを嬉しくそして光栄に存じます。

 新潟市で最も早く成立した対中国友好交流民間団体として30年、「新潟・ハルビン市民友好の会」は互いの友好事業促進のため、両国の「架け橋」としての重要な役割を、積極的に果たしてこられました。この場をお借りしまして、中国駐新潟総領事館を代表し、「新潟・ハルビン市民友好の会」成立30周年を心よりお祝い申し上げます。また、これまで、歴代の会長先生と会員の皆様による多大なるご尽力とその功績に対し、深く感謝と敬意を表したいと存じます。

 遡ってみますと、1970年代の末、当時、新潟県日中友好協会の会長であり、亀田郷土地改良区理事長でもありました佐野藤三郎先生は、指導者として中国の東北地域の三江平原の開発に積極的に携わりご尽力いただきました。この交流は、新潟県民の皆様の日中友好の気持ちを中国に伝え、黒龍江省の人々へ深い印象を与えました。これがきっかけとなり、新潟市とハルビン市は縁を結んだわけです。1979年に友好都市を締結して以来、各界の方々からのご協力とご支持のおかげで、新潟・ハルビンの交流・連携関係はますます深化しており、経済・文化・人文など多くの分野において活発化しています。21世紀に入り、新潟・ハルビンの友好交流は百花斉放となり、大きな成果をあげました。30年以上にわたる友好交流を通して、新潟市とハルビン市の友好関係は一層深まり、政府トップ間の相互訪問も頻繁に行われ、民間交流も日増しに活発化し、両国間の友情はますます固く結ばれております。中でも「草の根」の活動である市民交流は、互いの発展と繁栄に大きく寄与したと言え、双方の友好関係の発展に持続力と推進力の源となっています。現在、ハルビン市内にあり有名な観光地である太陽島公園内には「ハルビン新潟友誼園」という日本式の庭園がありますが、これはまさに、末永く続く新潟市とハルビン市の友好のシンボルであると思います。

 ハルビン市と新潟市、二つの都市の友好交流は、地方における中日交流として、ひとつのモデルケースとなっております。両市の市民の皆様は、中日民間友好交流事業の参加者として、互いに理解を深め、そして友情を深めながら、これまでの30年間の中日関係の変遷と両国国民間の友好交流の発展を、直接、肌で感じてこられたのではないかと思います。中日友好の歴史を振り返ってみると、大変感慨深いものです。中日両国は地理的に近く、文化面においても共通点が多く、2000年以上にわたる民間交流の中で、鑑真和上、阿部仲麻呂など、両国国民によく知られている優れた人物を輩出し、感動的な物語は数え切れないほど歴史に残っています。そのような流れの中、1970年代の中日関係は、更なる展開の時期を迎えました。周恩来元首相や田中角栄元首相をはじめとする政治家の方々の英断によって、中日両国は様々な困難を乗り越えて、ようやく1972年に国交正常化を実現しました。それ以降の中日関係はまるで漢詩の一節にある「忽ち一夜に春風来るが如く、千樹万樹に梨の花開く」のように、政治、経済、文化、教育など様々な分野で、これまでにはなかった、多くの機会を得ることにより、全面的な交流が始まると、両国で互いに「中国ブーム」「日本ブーム」が訪れるまでに至ったのです。このように友好的な雰囲気の中、中日両国は友好都市の提携を通じて民間交流の促進に力を入れました。1973年、天津市と神戸市は友好都市を締結しますが、これは中国と日本で結ばれた最初の友好都市であり、同時に中国が外国との間で締結された最初の友好都市でもありました。これにより中日両国の都市間における交流の幕開けとなって、両国友好関係発展の歴史における役割はますます重要になっていくのです。

 「中日平和友好条約」の締結と中国改革開放政策の実施に伴い、1980年代にはいると「中日友好」は両国の基本方針となり、民間交流もより一層活発化します。両国のリーダーたちはこのことを大変重視し、積極的に支持するなか、両国は民間における「三会」(中日民間人士会議、中日友好交流会議と中日友好21世紀委員会)の定期的な会議開催を決定し、民間交流はますます盛んになっていきます。1984年の秋、中国に招かれた三千名の日本の青年たちが訪中しましたが、これにより中日友好交流の新たな高まりを迎え、両国交流史において空前の壮挙であったと言えます。

 90年代以降、特に2000年に入ってから、両国の交流と往来は平等で互恵的となるにつれ、両国関係は益々成熟し、友好交流の内容もより具体的、実質的になって、旅行、文化、科学技術または経済貿易などの分野における交流の成果はどんどん豊かになっています。教育面で例を挙げますと、中日両国は1978年から互いに留学生を派遣し始めましたが、留学生、研修生または専門家と学者の往来は増えつつあり、2010年末の統計では、現在日本に滞在している中国からの留学生は8万人弱おり、中国への日本の留学生も1万5千人を超え韓国とアメリカに次いで第三位となりました。経済貿易の面では、2010年、両国の貿易額は約3000億ドルで、これは国交正常化元年である1978年の200倍であります。人的交流の面でも、2010年までに、両国の相互往来の人数は570万人を超え、結んだ友好都市も246ペアーと大幅に増えました。両国間の相互発展は勢いを増し、中日関係は今や、政治、経済貿易、文化などの分野を含め、アジアにとって、あるいは全世界にとって、最も重要な国際関係のひとつとなっています。中日両国間の友好関係が絶えず深化することで、両国国民に実益をもたらしています。

 中日友好について語るときには、わたしたちは新潟に言及しなければなりません。新潟は、中日国交正常化に大きく貢献された田中角栄元首相のふるさとであり、中日友好の伝統があると認識しております。これは中国政府がここに総領事館を設立した主な要因でもあります。昨年6月の総領事館設立以来、私たちは新潟の方々の親切さをしみじみと感じ、誠に感服しております。総領事館はこれまで民間友好事業を積極的に推進してきました。この一年の間に、中国・黒竜江省、江蘇省、広東省、山東省など各地から、学生訪問団、婦人連盟代表団、および中国青年視察団などが来県し、友好訪問をしました。昨年11月には新中日友好21世紀委員会第二回の会議が新潟で開催し、唐家璇元国務委員をはじめ中国の代表団が新潟の皆さんと交流する機会を持ちました。その際、私の故郷である江蘇省から芸術団が新潟を訪れ公演し、来場された皆さんに高く評価をいただきました。今年8月には、「中日文化交流55周年パネル展」も新潟市のりゅーとぴあで開催しました。そこでは新潟の皆さんに向けて交流のプラットフォームを設け、市民間の交流増進に役立てたのではないかと思います。一方、新潟の民間友好団体も様々な形で活躍されていらっしゃいます。今年二月、新潟·ハルビン市民友好の会が「日中友好のど自慢大会」を開催しましたが、その際、総領事館は協力させていただきました。

 特筆すべきことは、今年3月11日、日本の東北地域で大震災が発生した際に、中国の黒竜江省、香港など、総領事館を経由して被災地の皆様に微力ながら支援物資等を送りましたが、同時に、新潟県、新潟市、また市民の皆様には、被災地から避難した中国国民の帰国と、避難所での生活に、多大な援助をいただきました。新潟市民の方々からは避難所に温かいお飲み物や衣類を届けていただきました。中国には「苦しいときにこそ相手の真心が見える」という諺があります。災害に遭ったとき、両国民衆の深い絆で互いに支えあい、災害を経て、中日両国民の友情はより一層深まりました。

 来年は、中日国交正常化40周年の節目を迎え、中日関係は新たに大変重要な歴史的時期に入ることになります。田中角栄元首相の故郷である新潟にとっては更に大きな意味があります。ハルビン市と新潟市はこれを機に、一連の記念行事を開催し、市民交流の場としてのしっかりとしたプラットフォームを構築し、双方の市民友好を一層深めることが重要であると考え、私は以下の5つの提案をしたいと思います。

 一、文化やスポーツの交流プラットフォームを構築すること。双方の市民が、文化や芸術の分野で共感を抱くということはよくあることであり、民間の文化や芸術の交流プラットフォームを新たに構築することによって互いの感情を深め、交流を促進することができると考えます。例えば「太极拳」は両国市民の中でも非常に人気があり、ハルビン・新潟両市の市民友好交流の重要項目でもあります。そうした交流活動を広げることを提案したいと思っております。

 二、双方の市民の相互訪問と人的交流を積極的に推進すること。市民間の友好交流活動であれば、市民が参加でき、形式も多種多様で、一般市民にも歓迎されるのではないかと考えます。新潟とハルビンは観光資源がいずれも非常に豊富で、両市を結ぶ直行便もあり、行き来は非常に便利です。これらの優位性を十分に生かし、市民の相互訪問を積極的に推し進め、相互理解を深めたいと思っております。

 三、青少年交流をより一層強化すること。青少年は中日友好関係の未来と直結しており、民間交流の重要な原動力になります。若者の好みと特徴を踏まえて交流の形を刷新し、青少年間の交流事業をさらに強化し、二つの都市の青少年が、積極的に友好交流事業に参加できるように働きかけ、未来の民間友好の「使者」の育成に努めます。

 四、観光交流を促進すること。新潟は観光资源に恵まれ、観光産業の発展する条件に秀でています。それに加え、中国の社会経済の発展と生活水準の向上に伴い、海外旅行への興味は高まる一方で、消費市場の潜在力も大きいと感じます。中国の国慶節に際し大型連休が終わったばかりですが、統計によると、この連休中に海外旅行に行ったのは約220万人にのぼり、消費額は合計21億ドルだったそうです。韓国旅行を例にとりますと、9月30日の1日だけを見ても、25航路、70の飛行機が中国の各都市から仁川(インチョン)国際空港へ飛びました。中日双方も交通などの利便性を生かして、互いの優位性を発揮し、医療観光や農業観光などを含めた観光交流協力を強めて、人的交流を促進すべきと考えます。

 五、双方のマスコミ交流を展開すること。マスコミは民衆の相互認識や相互理解に対する大きな影響力を持っています。総領事館は先日、新潟のマスコミ各社による代表団を結成し、黒龍江省、ハルビン市及び中国の他の地域を訪問して、中国の実情や新潟とハルビンとの友好都市の認識を深めたのではないでしょうか。代表団は帰国後、積極的に、また客観的な報道に努めることと信じております。今後も双方のマスコミ交流を強化し、相互訪問の中で信頼関係を築き、積極的に両国でPRすることを提案したいと思います。

 皆様、中日友好関係をより深めるには、民間交流が大変重要だと考えます。市民間の交流がなくてはならないのです。中日両国の民間交流は無から有を創造して、小さなものから大きなものへと、発展の一途を辿ってきました。現在も、友好の活力と成長の勢いを保ちながら、両国の友好関係を促進しています。これからも総領事館は皆様と一緒に、中日友好の伝統を守り続けると同時に、両国の各分野における交流と協力をより一層促進して、積極的に中日民間友好事業を応援していきます。また、ハルビン市と新潟市、黒龍江省と新潟県、ひいては中日友好関係の更なる発展に向け、今後とも力を尽す所存であります。

 最後に、新潟ハルビン市民友好の会、創立30周年を迎えられたことに重ねてお祝いを申し上げ、新潟ハルビン市民友好の会が両国の友好交流により一層重要な役割を果たすものと信じております。ハルビン市と新潟市民の皆様の友好関係のますますのご発展と、ご在席の皆様のご健康とご活躍をお祈りして私の講演を終わらせていただきます。

 ご清聴ありがとうございました。