「歴史を教訓に、未来を共創する」 エッセイコンテスト受賞作選 (一)
2026/04/23

最優秀賞

ハルビンで見た過去と、私の思い

森谷咲絵

  今年の夏休み、私は中国のハルビンを訪れました。四泊五日の滞在の中で、特に心に残っているのは、七三一部隊の罪を伝える博物館を訪れたことです。日本で歴史を学んできましたが、七三一部隊の存在について詳しく知る機会はほとんどありませんでした。そのため、展示を前にしたとき、ただ呆然として立ち尽くすしかありませんでした。

  七三一部隊とは、日本の旧陸軍が中国で行った人体実験の部隊です。捕虜や民間人に対して、細菌の感染実験や凍傷の実験などを行い、多くの人が命を失いました。展示されていた資料や写真を見て、私は言葉を失いました。「こんなことが日本人によって行われていたのか」と、ただ驚くばかりでした。

  特に衝撃的だったのは、人をくくりつけるための十字架のような装置が実際にたくさん並んでいたことです。そこに人を縛り、上から薬や細菌を撒いて実験をしていたと知ったとき、恐怖と絶望を肌で感じました。思わず息をのんでしまうような光景でした。次に印象に残ったのは、実際の実験の様子を再現した模型でした。そこには、苦しむ人々の姿や無理やり行われていたであろう光景が表現されていて、目を背けたくなるほど恐ろしかったです。私はそれを見て、「人間が人間を人間として扱っていない」という事実に強い衝撃を受けました。苦しむ人の表情に対して、そこにいる七三一部隊の人々の表情が何も感じていないように見えることが、余計に恐ろしく思えました。彼らにとっては研究対象にすぎなかったのかもしれませんが、実際には命ある一人ひとりの人間です。その冷酷さを目の当たりにして、人間が恐ろしい存在にもなりうることを強く感じました。

  私は、なぜこんな恐ろしいことが日本人によって行われたのに、これまでの授業ではほとんど触れられなかったのか、不思議に思いました。知っていれば感じ方も違ったのではないかと考えると、なおさら驚きが大きかったです。

  帰国後、七三一部隊に実際にいた日本人の取材を見ました。その人は本当に当時部隊に所属していて、証言を通して過去の事実を伝えようとしていました。しかし、一部の日本人たちは「731部隊は存在しなかった」「デマだ」として、その証言に誹謗中傷を加えていました。私はその話を見て、とても腹が立ちました。他国のことばかり目を向けて、自分たちの国の過ちを認めないことはおかしいと思ったからです。

  この体験を通して、こうした行為は絶対にあってはならないと強く思いました。そして、もっと多くの日本人がこのことを知るべきだと感じました。過去の過ちを正しく理解することが、同じ悲劇を繰り返さないために必要だと思います。

  また、日本人は中国人に対して反感を持っている人が多いと感じます。でも、過去の事実を知らずに偏見を持つのは正しくないと思います。歴史を正しく知り、事実を受け止めることが、国や世代を超えた理解や友好につながると思いました。

  日本も過去に罪を犯しました。その事実を正しく受け止めることはとても大切です。現実を直視しなければ、過ちを繰り返す危険があります。そして、事実を隠したり否定したりすることは、平和や友好を築く妨げになってしまうと思いました。

  ハルビンでも五日間は、ただの旅行ではなく、私の価値観を揺さぶる経験になりました。歴史を知ることの重さや、平和を守る責任、そして国や世代を超えた友好の大切さを強く感じました。これからの自分の行動の中で、学んだことを忘れずに生かすことが、未来をより良くする一歩になると思います。

  歴史を知ることは、ときに衝撃的でつらいこともあります。でも、その経験を通して、私たちは未来を考え、平和な社会をつくるために何か行動を起こせると思います。私はこれからも、学んだことを大切にしながら、平和や友好の尊さを自分なりに伝えていきたいです。そして、日本と中国、さらには世界中の人たちが、互いに理解し合いながら生きる社会を作ることが、未来への大切な一歩になると信じています。