習近平主席の世界経済フォーラム会議での講演全文
2022/01/20

  北京17日発新華社電によると、中国の習近平国家主席は同日、北京から2022年世界経済フォーラムのオンライン会議に出席し、「自信を固め、勇躍前進し、ポスト・コロナ時代の素晴らしい世界を共に築こう」と題する講演を行った。全文次の通り。

 尊敬するシュワブ会長

 出席の皆さん、友人の皆さん

 皆さんこんにちは。世界経済フォーラムのオンライン会議に出席することを非常に喜んでいる。

 2週間後に中国旧暦寅年の新年がやってくる。中国文化の中でトラは勇敢と力の象徴で、中国人はよく、竜虎のように、はつらつとし、勇ましいと言う。現在人類が直面している厳しい挑戦〈試練〉を前にして、われわれはトラが翼を得たように勇ましく、前進途上のさまざまな障害に打ち勝って進み、新型コロナウイルス肺炎の暗い影を全力で取り払い、経済・社会の回復発展を全力で促進し、希望の光が人類を照らすようにしなければならない。

 現在、世界はこの百年なかった大変局を経験している。この変局は一時のことではなく、一つの国や地域のことではなく、深く幅広い時代の変化である。時代の変化と世紀のパンデミックが重なり、世界は新たな動揺変革期に入った。パンデミックにどのようにして打ち勝つのか。ポスト・コロナの世界をどのように築くのか。これは世界各国人民の共に関心を寄せる重大な問題であり、われわれが答えなければならない差し迫った重大な課題でもある。

 「天下の勢いは盛んでなければ衰え、天下の統治は前進しなければ後退する」。世界はいつも矛盾の動きの中で発展し、矛盾がなければ世界はない。歴史を縦覧すれば、人類は一つ一つの試練に打ち勝つ中で成長し、一つ一つの危機を乗り越える中で発展している。われわれは歴史前進のロジックの中で前進し、時代発展の潮流の中で発展しなければならない。

 風が吹こうと、雨が降ろうと、人類は常に前に進まなければならない。われわれは歴史の長い周期の比較分析の中から考えることに長け、また微細なところから物事の変化を洞察することに長け、危機の中から新たな機会を育て、変局の中から新たな局面を開き、困難と挑戦に打ち勝つ強大な力を凝集しなければならない。

 第一、手を携えて協力し、力を結集して感染症に打ち勝つ。この人類の前途・運命に関わる世紀の感染症に直面し、国際社会は頑強な阻止戦を開始した。事実であらためて示されたように、世界的危機の非常に危険な荒波の中で各国は190余りの小舟に乗っているのではなく、運命を共にしている大船に乗っているのだ。小舟は風波に耐えない。巨船こそ荒波に耐えることができる。国際社会の共同の努力で世界の感染症対策は重要な進展を収めた。しかし、感染のまん延が繰り返され、ウイルスの変異が増え、感染が加速し、人民の命の安全と身体の健康に重大な脅威をもたらし、世界経済に深い影響をもたらしている。

 自信を固め、同舟相救うことが感染症に打ち勝つ唯一の正しい道である。相互のいかなる掣肘も、ゆえないいかなる「責任転嫁」も戦機を誤らせ、大局を阻害することになる。世界各国は国際防疫協力を強化し、治療薬の研究開発協力を積極的に展開し、数多くの感染予防線を築き、人類衛生健康共同体の構築を加速しなければならない。特にワクチンという強力な武器を使い、ワクチンの公平分配を確保し、接種を急ぎ、国際「免疫デバイド〈格差〉」を埋め、命と健康をしっかり守り、人民の生活をしっかり保障しなければならない。

 中国は言ったことは必ず行い、行えば必ず成果を収めている。これまでに120余りの国と国際機関に20億回分のワクチンを提供した。中国はアフリカ諸国に10億回分のワクチンを追加提供する。うち6億回分は無償援助で、また東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国に1・5億回分のワクチンを無償提供する。

 第二、各種リスクを解消し、世界経済の安定・回復を促進する。世界経済は現在、低い谷を歩んでいるが、多くの制約要素にも直面している。グローバル産業チェーン・サプライチェーンが乱れ、大口商品価格が持続的に上昇し、エネルギー供給がひっ迫するなどのリスクが互いに交錯し、経済回復プロセスの不確実性が激化している。世界の低インフレ環境に顕著な変化が起き、複合型インフレリスクが顕在化しつつある。主要経済体〈エコノミー〉の金融政策に「急ブレーキ」や「急ハンドル」があれば、外部に深刻なマイナスの影響をもたらすことになり、世界の経済・金融安定に試練をもたらし、広範な発展途上国が最初にダメージを受けることになる。われわれは感染症予防・抑制常態化の条件下の経済成長の新エネルギー、社会生活の新モデル、人の往来の新経路を模索し、越境貿易の円滑化を推進し、産業チェーン・サプライチェーンの安全・円滑を保障し、世界経済の回復プロセスを着実に進めなければならない。

 経済グローバル化は時代の潮流である。大河の奔流が海に向かうと必ず逆流に遭遇するが、いかなる逆流も大河の流れを阻むことはできない。原動力がその前進を後押しし、阻む力がその強大化を促す。非常に多くの逆流や危険な浅瀬が出現しても、経済グローバル化の方向は変わっていないし、変わることはない。世界各国は真の多国間主義を堅持し、壁を築くのではなく取り除き、隔絶ではなく開放し、デカップリングではなく融合を堅持し、開放型世界経済の構築を推進しなければならない。公平正義を理念とし、グローバル・ガバナンス体系の変革をリードし、世界貿易機関〈WTO〉を核心とする多角的貿易体制を守り、十分な協議を踏まえ、人工知能、デジタル経済などのために、各方面が広く受け入れ、有効に行われるルールをつくり、科学技術イノベーションのためにオープン、公正で被差別のない有利な環境を築き、経済グローバル化をよりオープン、包摂、インクルーシブ、バランス、ウィンウィンの方向に発展させ、世界経済の活力が十分に発揮されるようにしなければならない。

 現在、皆に一つの共通認識がある。それは世界経済を危機から抜け出させ、回復を実現するにはマクロ政策の協調を強めなければならないということだ。主要経済体は共同体意識を樹立し、システムの考えを強め、政策情報の透明性と共有を強化し、財政、金融政策の目標、度合い、テンポを調整し、世界経済が再び底に落ちることを防がなければならない。主要先進国は責任ある経済政策をとり、政策の外部波及作用をコントロールし、発展途上国に重大なダメージをもたらすのを回避しなければならない。国際経済金融機関は建設的役割を果たし、国際共通認識を凝集し、政策協力を強め、システミックリスクを防がなければならない。

 第三、発展デバイド〈格差〉を乗り越え、世界の発展事業を再興する。グローバル発展プロセスは現在、深刻な打撃を受け、南北格差や回復の二極化、発展の断層、技術格差などの問題が一段と突出している。人類発展指数がこの30年間で初めて低下し、世界で新たに1億余りの貧困人口が増え、8億人近くが飢餓の中で生活し、食糧安全保障、教育、就業、医薬衛生など民生分野がより多くの困難に直面している。一部発展途上国は感染症のために貧困に戻り、混乱が生まれ、先進国でも多くの人が生活難に陥っている。

 いかなる困難に遭遇しても、われわれは人民を中心とする発展思想を堅持し、発展促進、民生保障をグローバル・マクロ政策の際立った位置に据え、国連の持続可能な開発のための2030アジェンダを実行に移し、既存の発展協力メカニズムの相乗効果向上を促し、バランスのとれたグローバル発展を促進しなければならない。われわれは共通だが差異のある責任の原則を堅持し、発展の枠組みの中で気候変動対応の国際協力を推進し、「国連気候変動枠組み条約」第26回締約国会議〈COP26〉の成果を実行に移さなければならない。先進経済体は率先して排出削減の責任を果たし、資金・技術支援の約束を実行し、発展途上国の気候変動対応と持続可能な発展の実現に必要な条件を整えなければならない。

 昨年、私は国連総会でグローバル発展イニシアチブを提案し、国際社会が発展途上国の直面する緊急問題に関心を払うよう呼びかけた。このイニシアチブは全世界に向けた公共財で、国連2030アジェンダとリンクし、グローバル共同発展を推進することを目的としている。中国は各国と手を携えて協力し、イニシアチブの実行を共同で推進し、いかなる国も置き去りにしないよう努力することを願っている。

 第四、冷戦思考を捨て、平和共存と互恵ウィンウィンを実現する。現在、世界は決して太平ではなく、憎しみと偏見をあおる言論を絶えず耳にする。それによってもたらされるさまざまな封じ込めや圧力、さらに対決は世界の平和と安全にとって百害あって一利なしだ。歴史が繰り返し証明しているように、対決は何の役にも立たないだけでなく、災難のような悪しき結果をもたらす。保護主義、一国主義は誰も保護できず、最終的に人を損ない、自らも害するだけである。覇権、いじめは歴史の潮流に逆らう動きだ。国家間の矛盾や意見の相違は避けがたいが、一方が得点すると一方が失点するゼロサムゲームは何の足しにもならない。あくまでも「小さな庭に高い壁」、「平行する枠組み」をつくるいかなる行為も、排他的な「小さなグループ」、「小さなブロック」をつくり、世界を分断することに熱中するいかなる行為も、国家安全保障の概念を拡大解釈し、他国の経済・技術の発展を抑え込むいかなる行為も、イデオロギーの対立をあおり、経済や科学技術の問題を政治問題化、武器化するいかなる行為も、みな共通の試練に対応する国際社会の努力を深刻に弱めるものである。平和発展と協力ウィンウィンこそ人の正しい道である。異なる国、異なる文明は互いに尊重する中で共に発展し、小異を残して大同につく中で協力ウィンウィンを図らなければならない。

 われわれは歴史の大勢に従い、国際秩序の安定に尽力し、全人類共通の価値を発揚し、人類運命共同体の構築を推進しなければならない。対決ではなく対話、排他ではなく包摂を堅持し、あらゆる形の一国主義、保護主義に反対し、あらゆる形の覇権主義、強権政治に反対しなければならない。

 出席の皆さん、友人の皆さん

 昨年、中国共産党は創立百周年を迎えた。中国共産党は中国人民を団結させ、リードし、長期にわたる苦しい奮闘を進め、国家建設・発展と人民の生活改善で世界が注目する成果を収め、小康〈ややゆとりのある〉社会全面完成の目標を予定通り実現し、貧困脱却堅塁攻略戦に予定通り勝利し、絶対貧困問題の歴史的解決を果たし、近代的社会主義国家全面建設の新たな征途に踏み出した。

 ―中国は断固として揺るぎなく質の高い発展を推進する。中国経済は全体的発展の勢いが良好で、昨年の国内総生産〈GDP〉が8%前後増え、比較的高い成長と比較的低いインフレの二つの目標を実現した。国内外の経済環境の変化による巨大圧力を受けているが、中国経済は強じん性が高く、潜在力が十分で、長期的に上向くファンダメンタルズは変わっていない。われわれは中国経済発展の前途に十分自信をもっている。

 「国の豊かさはその国の民の豊かさにある」。中国経済は長足の発展を収め、人民の生活水準が大幅に向上したが、われわれは人民のより良い生活への憧れを満たすにはまだ長期の苦しい努力が必要なことをよく承知している。中国は人の全面的発展、全人民の共同富裕を図り、より顕著な実質的進展を収めることを打ち出し、そのために各方面で努力することを明確にした。中国は共同富裕を実現するとしたが、それは平均主義ではなく、まず「パイ」を大きくし、その後に合理的制度・手配を通じ、「パイ」をうまく切り分けるもので、潮が満ちれば船は高く持ち上げられ、それぞれが得られ、発展の成果がより多く、より公平に全人民に恩恵をもたらすようにしなければならない。

 ―中国は断固として揺るぎなく改革・開放を推進する。中国の改革・開放は永遠に途上にある。国際情勢がどのように変化しても、中国は常に改革・開放の旗を高く掲げる。中国は引き続き市場が資源配分における決定的役割を果たすようにし、政府の役割を一段と発揮させ、公有制経済を少しも揺るがず強固にし、発展させ、非公有制経済の発展を少しも揺るがず奨励、支持、指導する。中国は統一された、オープンで、競争があり、秩序のある市場システムを構築し、すべての企業について法律の前に地位が平等で、市場の前で機会が平等であることを確保する。中国は各種資本が中国で法令順守の経営を行い、中国の発展に積極的役割を果たすことを歓迎する。中国は引き続き高いレベルの対外開放を拡大し、規則、管理、基準などの制度型開放を着実に広げ、外資企業の内国民待遇を実施し、「一帯一路」の質の高い発展を促す。地域包括的経済連携協定(RCEP)が今年1月1日正式発効した。中国は義務を忠実に果たし、協定調印各方面と経済・貿易連携を深める。中国はまた引き続き環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP)とデジタル経済パートナーシップ協定(DEPA)への加盟プロセスを推進し、地域と世界の経済に一段と融合し、互恵ウィンウィンの実現に努力する。

 ―中国は断固として揺るぎなくエコ文明建設を推進する。私が常に言っているように、池を干して魚を取るような経済発展のために資源や生態環境を犠牲にすることはできないし、生態環境の保護も木に登って魚をとるような経済発展を犠牲にすることはできない。中国は山紫水明こそ金山銀山であるという理念を堅持し、山や川、森林、田畑、湖、草地、砂地の一体化保護とシステムガバナンスを推進し、エコ文明建設を全力で取り組み、汚染防止強化に全力で取り組み、人民の生産・生活環境改善に全力で取り組む。中国は現在、世界最大の国立公園システムを構築している。中国は昨年、国連「生物多様性条約」第15回締約国会議〈COP15〉を成功裏に開催し、クリーンで美しい世界の建設推進のため貢献した。

 炭素排出量ピークアウトとカーボンニュートラルの実現は中国の質の高い発展のための内的要求であり、国際社会に対する中国の厳粛な約束である。中国は言ったことを実行し、約束を守り、断固推進し、すでに「2030年までの炭素排出量ピークアウト行動プラン」を発表し、また今後、エネルギー、工業、建設などの分野の具体的実施プランを発表する。中国はすでに世界最大規模の炭素市場とクリーン発電システムを整備し、再生可能エネルギーの発電設備容量が10億㌔ワットを超え、出力1億㌔ワットの大型風力発電、太陽光発電基地の建設が秩序をもって始まっている。炭素排出量ピークアウトとカーボンニュートラルの実現は一挙にできるものではない。中国は打破と確立の両方を進め、着実に取り組み、新エネルギーに確実に代替する過程を推進する中で伝統的エネルギーを徐々に秩序をもって減らし、経済・社会の平穏な発展を確保する。中国は気候変動対応国際協力を積極的に推進し、経済・社会発展の全面的グリーン転換を共同で推進する。

 出席の皆さん、友人の皆さん

 ダボスは世界的にウィンタースポーツにとって素晴らしいところとして知られている。北京冬季五輪・パラリンピック大会が間もなく開幕する。中国は世界に簡略、安全、精彩のオリンピックの盛会をささげる自信がある。大会のテーマスローガンは「共に未来に向かう」だ。われわれは手を携えて自信に満ちて共に未来に向かおう。

 皆さん、ありがとう。