習主席の中国ASEAN対話30年サミット演説全文
2021/11/23

  北京22日発新華社電によると、習近平中国主席が同日、中国ASEAN対話関係樹立30周年記念サミットで行った「運命を共にし、共同で故郷を建設しよう」と題する演説の全文は次の通り。

 尊敬するブルネイ国王ハサナル・ボルキア陛下

 同僚の皆さま

 皆さんと「クラウド」で集い、中国ASEAN対話関係樹立30周年を共に祝い、発展の成果を回顧し、歴史的経験を総括し、将来の青写真を描けることを大変うれしく思う。

 中国ASEANは対話関係樹立から30年、尋常でない歩みをたどった。この30年は経済グローバル化が深まり、国際的枠組みが大きく変化した30年で、中国とASEANが時代のチャンスをとらえ、双方の関係の飛躍的発展を実現した30年だった。われわれは冷戦の影から抜け出して、共に地域の安定を守った。われわれは東アジアの経済統合をリードし、共同の発展・繫栄を促進し、20億余の民衆がより良い生活を送れるようにした。われわれは善隣友好、協力・ウィンウィンの光明に満ちた道を踏み出し、日増しに緊密になる運命共同体へ突き進み、人類の進歩的事業に重要な貢献をした。

 本日、われわれは中国ASEAN全面戦略パートナシップ樹立を正式に宣言した。これは双方の関係における新たな里程標であり、地域と世界の平和・安定と繁栄・発展に新たな原動力を注ぐだろう。

 同僚の皆さま

 30年来、中国ASEAN協力で成果が得られたのは、双方が地理的に近く、人・文化が通じる独特の条件に恵まれていたおかげだが、それ以上にわれわれが時代の潮流に積極的に順応し、正しい歴史的選択をしたことと切り離せない。

 第一に互いに尊重し、国際関係の基本的準則〈規範〉を固く守った。東洋の文化は「己の欲せざるところ、人に施すことなかれ」を重んじており、平等に遇し、睦まじさを共にすることはわれわれが共に追求するものだ。われわれは平和共存五原則の「バンドン精神」を率先して提唱し、中国はASEAN対話パートナーの中で真っ先に「東南アジア友好協力条約」に加入した。われわれはお互いの重大な懸念に配慮し、それぞれの発展の道筋を尊重し、誠実な意思疎通によって理解と信頼を増進し、小異を残して大同につくことによって意見の相違と問題を適切に処理し、アジアの価値観を共に守り、広く発揚した。

 第二にウィンウィンの協力を進め、平和的発展の道を歩んだ。中国とASEAN諸国は似た歴史的体験があり、国家の安定と人民の幸せの実現はわれわれの共通の目標だ。われわれは地域の平和・安定を揺るぎなく守り、つねに発展というテーマに焦点を当て、率先して自由貿易圏を設置し、「一帯一路」を高い質で共に建設し、「地域包括的経済連携協定」(RCEP)の署名を共同で後押しし、地域の融合した発展と人民の福祉を促進した。

 第三に見守り助け合い、親善・誠実・互恵・包摂の理念を実践した。中国とASEANは隣接しており、助け合いはわれわれの共通の伝統だ。中国とブルネイのことわざは共に、「福あれば共に享し、難あれば共に当たる」と説いている。われわれは親戚のように行き来し、情義、信義を重んじ、目出たいことがあれば共に祝い、困った事があれば支えあっている。連携によってアジア金融危機、世界的金融危機、新型コロナウイルス感染症などの挑戦に対応し、運命共同体意識を強めた。

 第四に包摂・相互参考を貫き、開かれた地域主義を共に築いた。中国とASEANは民族・文化・宗教が多種多様で、多様性・包摂性はわれわれの共通の遺伝子だ。われわれは東アジア文明から知恵を汲み取り、開放の理念で地域経済統合をリードし、平等な話し合いでASEAN主導の地域協力を推し進め、包摂の心理状態で開放的で排他的ではない友達の輪を築き、共に協議、建設、享受する原則を実行に移した。

 30年の尊い経験は中国とASEANの共同の財産であり、双方が全面的な戦略的パートナシップを発展させるための基礎を築き、拠り所を与えた。それを特に大切にし、長く堅持するとともに、新たな実践の中でたえず豊富にし、発展させなければならない。

 同僚の皆さま

 「路遥かにして馬の力を知り、日久しくして人の心を知る」という。中国は過去も、現在も、将来も永遠にASEANのよき隣人、よき友、よきパートナーだ。中国がASEANを揺るぎなく周辺外交の優先的対象とし、ASEANの連帯とASEAN共同体の建設を揺るぎなく支持し、地域の枠組みにおけるASEANの中心的地位を揺るぎなく支持し、地域・国際問題でASEANがより大きな役割を果たすことを揺るぎなく支持するとあらためて表明したい。

 先ごろ、中国共産党は第19期中央委員会第6回総会〈19期6中総〉を開催し、中国共産党の100年の奮闘の重大な成果と歴史的経験を全面的に総括し、中国人民はいま自信にあふれて近代的社会主義国家全面建設の新たな征途を前進している。中国の発展は地域と世界により多くのチャンスを与え、力強い原動力を注ぐだろう。中国はASEANと大勢をつかみ、妨害を排し、チャンスを共有し、共に繫栄を築き、全面的な戦略的パートナシップを確実に実行に移し、より緊密な中国ASEAN運命共同体の構築に向かって新たな一歩を踏み出すことを願っている。

 今後の中国ASEAN関係について、五つの提案をしたい。

 第一、共に平和な故郷を築く。平和がなければ、何事も話にならない。平和はわれわれの最大の共通利益で、各国人民の最も大きい共通の願いでもある。われわれは地域の平和の建設者と守護者になり、対話を堅持し、対抗せず、パートナーになり同盟を結ばず、手を携えて平和を脅かし、壊すさまざまなマイナス要因に対応しなければならない。われわれは真の多国間主義を実践し、あくまでも世界と地域の事はみんなで相談して決めるようにしなければならない。中国は覇権主義と強権政治に断固反対し、周辺の隣国と長期的に友好的に付き合い、地域の恒久平和を共同で守ることを願い、絶対に覇権を求めず、まして大国が小国を欺くようなことはしない。中国はASEANの非核兵器地帯づくりの努力を支持しており、できる限り早く「東南アジア非核兵器地帯条約」議定書に署名したい。

 第二、共に安寧な故郷を築く。新型コロナウイルス感染症は、世界に絶対安全な孤島はなく、普遍的安全保障こそが真の安全保障であることを再び証明した。中国は「中国ASEAN健康の盾」協力イニシアチブをスタートさせる用意がある。これには、▽ASEAN諸国にさらに1・5億回分の新型コロナウイルスワクチンの無償援助を行い、地域諸国の接種率向上に助力する▽ASEAN感染対策基金にさらに500万㌦追加し、ワクチン共同生産と技術移転を強め、基幹医薬品の研究開発協力を繰り広げ、ASEANの自主保障レベルを引き上げる▽ASEANの末端公衆衛生システムづくりと人材養成を手伝い、公衆衛生上の重大な緊急事態への対応能力を高める―ことが含まれる。この地域はまだ、各種の伝統的安全保障と非伝統的安全保障の挑戦に直面しており、共同、総合、協力、持続可能の安全保障観を堅持し、防衛、対テロ、海上共同捜索救助・演習、国際犯罪取り締まり、災害管理などの分野の協力を深めるべきである。南中国海の安定を共同で守り、南中国海を平和の海、友情の海、協力の海に築き上げるべきである。

 第三、共に繫栄の故郷を築く。私は先ごろ、グローバル開発イニシアチブを打ち出した。これには国際社会が力を合わせて挑戦に対応し、世界経済の回復を促し、国連の持続可能な開発のための2030年アジェンダの実行を速める狙いがある。このイニシアチブはASEAN各国の開発の必要にかなっており、「ASEAN共同体ビション2025」との相乗効果が可能だ。中国はASEAN諸国の感染症対策と経済回復のために今後3年間にASEANにさらに15億㌦の開発援助を行う用意がある。中国としてはASEANと国際開発協力を繰り広げ、取り決め交渉をスタートさせ、中国ASEAN開発知識ネットワーク立ち上げを支援したい。また貧困削減分野の交流協力を強化し、均衡のとれた包摂的な開発を促進したい。

 われわれはRCEPの機能を全面的に発揮させ、中国ASEAN自由貿易圏3・0版づくりをできるだけ早くスタートさせ、貿易と投資の自由化・円滑化レベルを引き上げ、デジタル経済、グリーン経済などの分野の協力を広げ、経済・貿易の革新的発展のデモパークを共に建設すべきである。中国は巨大な国内市場を擁しており、つねにASEAN諸国に開放する。今後5年間にASEANからの農産物1500億㌦の輸入を目指すことを含めて、もっと多くのASEAN諸国の良質な産品を輸入したい。「一帯一路」を高い質で共に建設し、ASEANが提起しているインド太平洋アウトルックとの協力を進めるべきである。中国は「一帯一路」国際生産能力の質の高い発展のデモ区をさらにつくる用意があり、ASEAN諸国が国際陸海貿易新ルート共同建設に参加することを歓迎する。中国は科学技術イノベーション向上計画をスタートさせ、ASEANに1000件の先進的適正技術を提供し、今後5年間にASEANの若手科学者300人の中国での交流を支援する。デジタルガバナンス対話を繰り広げ、デジタル技術の革新的応用を深化させることを提唱する。

 第四、共に美しい故郷を築く。人と自然の調和共生は永続的発展実現の基礎だ。中国はASEANと気候変動対応対話を繰り広げ、政策の意思疎通と経験の共有を強化し、持続可能な開発の計画をドッキングさせたい。地域のエネルギー転換を共同で推進し、クリーンエネルギー協力センターの設立を検討し、再生可能エネルギーの技術共有を強化すべきである。グリーン金融とグリーン投資協力を強化し、地域の低炭素持続可能な開発をサポートすべきである。中国は中国ASEAN農業グリーン開発行動計画を発起し、各国の農業発展の強じん性と持続可能性を高める用意がある。中国ASEAN諸国海洋科学技術共同研究開発センターの活力を増強し、ブルー経済パートナシップを構築し、海洋の持続可能な開発を促進すべきである。

 第五、共に友好の故郷を築く。平和、発展、公平、正義、民主主義、自由という全人類共通の価値を提唱し、文明の交流・相互参考を深化させ、地域の多様な文化の特色と強みをうまく生かすべきである。コロナ後の秩序ある人の往来再開を積極的に検討し、文化、観光、シンクタンク、メディア、女性などの分野の交流を引き続き推し進め、双方の民衆が一層知り合い、親しみ合い、溶け合うようにすべきである。中国とASEANの未来は青年のものであり、中国はASEANとの職業教育、学歴相互認定などの協力を強化し、中国ASEANエリート奨学金の定員を増やし、青年キャンプ活動を繰り広げる用意がある。来年、われわれは北京冬季オリンピック大会と杭州アジア大会を相次いで迎える。中国としてはこれを機に、ASEAN各国とのスポーツ交流協力を深めたい。

 同僚の皆さま

 中国の古人は「謀ヲ義ニ度〈はか〉ルハ必ズ得、事ヲ民ニ因〈よ〉ルハ必ズ成ル」〈問題を考えるのに道義に基づけば何かが得られ、物事を手配するのに庶民に依拠すれば成功できる意〉と述べている。人民のより良い生活への憧れを心に止め、平和を守り、発展を促す時代の使命を肩に担い、手を携えて前進し、奮闘を続けて、より緊密な中国ASEAN運命共同体を築き、一層繁栄した素晴らしい地域と世界を共に作ろうではないか。